雑草×イラストの意味
トップページ
雑草計画のホームページで真っ先に目にするイラストですが、これは、雑草と我々の関りをまとめたものです。
雑草と我々の生活が非常に密接していることを感じて欲しいと思ってまとめました。
ただ、詳しい説明をしてこなかったので、改めて書きたいと思います。
雑草×獣害
雑草とイノシシや、シカが、どうつながっているのかと思われそうですが、雑草は絶好の隠れ場所となっています。
最近、街中や山の近くの農耕地で獣害が多発していますが、雑草管理が不十分なために、我々の生活圏までイノシシやシカが現れます。
獣害対策には電気柵がよく使用されるのですが、設置の際に雑草をしっかり刈らないと電線に雑草が接触することで漏電してしまいます。
雑草×新技術
雑草管理に使用されている技術は、正直なところ、それほど多くはありません。
大まかに整理すると、①物理的、②化学的、③生物的な方法になります。
①の物理的な方法は、草刈り機で刈り取ったり、トラクターで土を耕す手法です。鎌での刈り取りや手で雑草を取り除くことも含まれます。
機械はともかく、鎌や手による除草は大昔から行われている方法です。
ただ、これだけ技術が進歩している世の中で、古典的な手法が残っているということは、雑草の管理技術があまり多くない証かもしれません。
②の化学的な方法は除草剤です。除草剤の原型ができてから約70年、直近の除草剤の出荷額は1200億円を超えています。
③の生物的な方法は、水田に応用されているアイガモ、鯉があります。他にも、ヤギを活用した除草がありますが、生物の管理が必要になることもあり、管理技術の主流にはなっていません。
このような背景を踏まえると、雑草管理に活用可能な技術の選択肢をもっと増やしていく必要があると思います。既にある技術を改良したり、組み合わせるだけでも、新たな技術が生まれる可能性が高いと思います。
そのためにも、雑草のことをもっと知ってもらうこと、雑草の性質や問題となっている場所や環境の情報を把握してもらうことが、大事になると考えています。
雑草×利用
雑草は、人間にとって密接な植物なので、古来から様々に利用されてきました。
例えば‥
■カラムシ:繊維を活用、苧麻(ちょま)とも呼ばれ戦国時代は上杉謙信の収入源にも。
■コブナグサ:黄色の染織素材として。黄八丈が有名。
■ドクダミ、ゲンノショウコ、ヨモギ:薬草として活用。
■クズ:繊維が布(葛布)の原料に。
■スベリヒユ:茎が食用に。山形では伝統食として、今でも残る。
■ヨシ:茅葺屋根の素材に使用。
■イグサ:畳の素材に使用。
このようなかたちで、様々に活用されています。
今ある作物も祖先は雑草と考えられており、これからも雑草を活用する事例は増えていくかもしれません。
最近、田辺三菱製薬がタバコを活用したコロナワクチンを開発していますが、まだまだ未解明の雑草は、新たな研究素材として非常に面白い存在だと思います。
雑草×研究・教育
繰り返しとなりますが、雑草は人間と非常に密接な関係があります。
なので、書店に行けば雑草の図鑑や雑草に関連した本が置かれています。
一方で、雑草という世界中のどこにでもある存在の割には、情報量があまり多くないという見方もできます。例えば、日本には800校近い大学があり、農学部(生物系含む)は50校程度となります。その中で、雑草を研究している講座はごくごくわずかです。
雑草があまりに当たり前過ぎる故の盲点かもしれません。
もしくは、除草剤によって雑草管理の諸問題がかなり解決されているため、雑草の重要性が意識されにくいのかもしれません。
1945年頃の日本は食糧難のため米や作物の大増産が大きな課題でしたが、近年では米が余剰となり、ブランド化や食味に課題が変わっています。このことと同じく、雑草による被害が急拡大しない限り、雑草研究が今以上に注目されることは難しいのかもしれません。
ただ、ここ数年に発生した新型コロナウイルスの諸問題とそれに対する対応力(特にワクチン製造)でも分かるように、危機が発生してからでは遅く、日頃からの地道な研究と人材育成が不可欠です。これは、雑草の研究についても全く同じことが言えます。
雑草×〇〇
今、書籍化を念頭に、雑草と人との関り方をまとめていています。
雑草の問題は、除草剤の出荷額のようにはっきりと数値が分かるものは少なく、様々な統計の中に埋没しています。これは、あまりに当たり前の存在とされている雑草の盲点かもしれません。
調べるほど、盲点の大きさが明らかになり、まだ、全体像を把握できていない状態です。
しかも、これまではどうにかなってきたことが、少子高齢化、脱炭素など社会環境の変化でどうにもならなくなる可能性が出てきました。例えば、地域の雑草管理の担い手は、もう70代近くなっています。そして、石油を素材とした除草剤の製造が困難になる時代が来るかもしれません。
このためにも、『雑草×〇〇』の力が必要です。
〇〇には、様々な分野の人や技術が入ることを想定しています。
そうすることで、雑草との新たな向き合い方が生まれてくると考えています。
改めて、このサイトが様々な人や技術の橋渡しや、きっかけになればという想いを強くしているところです。