雑草のはなし29「雑草の育て方①」
雑草を育てたい人?
雑草は抜いたり、刈る存在だと考える方が圧倒的に多いと思いますが、このサイトを訪れた方の中には、「雑草、育てる」で検索する方もいるようです。
検索キーワードだけでは、どうして育てたいと考えているかまでは分からないのですが、もしかしたら、山野草のように鉢植えにしてみたいという想いがあるのかもしれません。
個人的に、これまで200種以上の雑草を育ててきました。
観賞用ではなくて、重金属のカドミウムに対する耐性・吸収量を調べる実験や、除草剤の効果を調べる試験のためでした。
雑草を枯らすための情報はかなり多いのですが、育てるための情報は大幅に減るので、経験を積みながら手探りで育ててきました。
全てが上手く育った訳では無い(難しい個体もあります)のですが、だいぶ育てられるようになりました。
苗か種子か
これまでの記事でも雑草を育てる話に触れていましたが、少し詳しく雑草の育て方をまとめてみます。
まず、雑草の育て方には大きく2つの方法があります。
1)雑草の種子を採取して播種(はしゅ)する
2)雑草の苗を野外から採取して植え直す
※播種=種子をまくことです。
簡単な方法は野外から雑草の苗を探してくる方法ですが、そこそこの規模で栽培する場合は種子から育てる方法が向いています。
雑草の種子は、当然、スーパーなどで購入することができないので、休耕田や空き地などで採取します。
雑草の種子を集める際には、
1)種類を判別する(色々な雑草の種子が混入するのを防ぐ)
2)時期を逃さない(雑草の種子は作物と違って熟すと落下しやすくなる)
事前に雑草の名前と生育地を把握しておき、同時に種子の熟し具合を確認しておきます。これは、結構面倒な作業です。
しかも、さあ採種という時に刈られていたということがよくあります。
雑草を残して欲しいとは言いにくいことですが‥土地の所有者が分かっている場合は早めに伝えておくことも大切です。ただ、採取直後の種子をそのまま土にまいても上手く発芽しません。
さらに、以下の作業が必要となります。
種子の処理
1)採種した種子を新聞紙の上などに広げて陰干し
同時に、他の種子が混ざっていないかを確認したり、種子と一緒に回収された昆虫などを取り除きます(大体は自然にいなくなります)
2)土の下に種子を埋める
休眠といって動物で言うところの冬眠状態にある種子を目覚めさせる(発芽させる)ために必要な作業です。種子が土の中で水を吸ったり、温度変化を受けることで発芽する条件が整います。
この際、種子をそのまま埋めてしまうと土に混ざって回収できなくなるので、ストッキングを使用します。ストッキングを適当な大きさに切り、種子を入れて切り口をヒモでしばります。
大学の頃、研究予算でストッキングを買うというかなり怪しい状態でしたが、研究室の棚にはストッキングが常備されていました。工夫をするのが研究の面白さだと思います。
3)土を80センチくらいの深さまで掘る
あまり浅いと土の中で種子が発芽してしまい、もやしのようになってしまうことがあります。
埋める時期は12月頃から2月頃までとなります。
雑草を育てるのに適した季節が春~秋なので、冬のうちに埋めます。同時に、種子が寒さに触れることで、発芽が促される側面もあります。
4)土から掘り出した種子を乾かして保存
しっかり乾かしておかないと、カビ発生の原因となります。
場合によっては、種子に付着した土をふるいで取り除きます。
雑草の種子を常温で保存すると発芽率が低下するので、冷蔵庫に保存します。
そうすれば、数年間は発芽率の高い状態を保つことができます。
これで種子の準備は完了です!
ようやく、種子を土にまきます。
基本的に、小さな種子には少なめに土を被せ、大きい種子には多めに土を被せておけば大丈夫です。
その後は適度に水を与えること、温度の管理や、土の種類に気をつけることも大切です。
とにかく、『育てたい雑草の生えている環境を再現』すれば上手に育てることができます。
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